September 17, 2005

CIT:柴門ふみさんと自転車

「私(柴門ふみ)は毎朝、仕事場のある駅前のマンションまで自宅から自転車で向かう。

 季節のたびに違った花を咲かせる庭木を眺めるのが楽しみなのだ。なかなか開かない西武線の踏み切りも、足元の草花を見つめる時間と思えば苦にはならない。ーー春にはタンポポ、夏にはツユ草、そして秋にはコスモス。住宅街の路地には、どんぐりはもとより、栗のイガや胡桃の実まで落ちている。

 仕事を終えた夕方は、夕焼け方向へ自転車をこぐ。犬を連れた人々と何人もすれ違う。サッカー教室帰りの泥だらけのユニフォーム姿の小学生。遠くに響く電車の音。やがて、「こちらは練馬区役所です。お家にかえりましょう」という声がスピーカーから流れる。
 こういう暮らしが、私は好きなのである。」

「東京わが街わが友」東京新聞編集局編 東京新聞出版局 2001.7.10 p.312

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