October 20, 2005

幼い日の記憶(1955.12.26の日記から)

1955年12月26日晴れ

(ぽかぽかしたいい日でした。)

 一般に記憶という意味がどういうことだか、それを教えてくれる人はこの世にいない。 それほどデリケートな神秘なるものだ。

 私の脳裏には幼かった頃の思い出がある。 それを今ここに備忘の控えをしても悪くはあるまいと思う。

 僕がまだ学校に通ってい なかった頃のことは断片的にスポットライトの光の弱かった部分として思い出す。ガー ドの上ーそれは赤かったーを、汽車がいや電車だったかもしれないーこれ以上追って はいけないその乗物さえ走っていたかはっきりしなくなるーがごおっと走っていっ た。そして街灯は首の曲がったのであった。ところで、私はその時の連れを全然覚え ていない。その時が父母が後年話した私の迷子の経験の時だったのかも知れない。

 どっ かの小父さんの背中にまたがってついにその人の鼻血を出させてしまったこと。緑の 垣根、ハーモニカをもらった。姉(下の)と留守番の時に誰だったかー伊勢松っちゃ んかも知れないーがやってきてびっくりしていたら、母が乳母車を引いて帰って来、 やっと安心したこと。つい前の警察署。ドブ。アスファルトの広い道。駅。どこかの 兵隊さんがやってきて動物園に連れてってくれた。大きなカバがあくびをした。水前 寺公園のかすかな景色。船に乗った。どこかに旅行した(それが島原だった)。

 私の 幼児の時の記憶といえばこのくらいだ。

(たまたま開いた日記に、幼い日の記憶が記録されていたので、ここに収録することにした。)

12:27:02 | akybe | comments(4) | TrackBacks