November 08, 2005

CIT:「話の腰を折る」のを厭う日本人

「ほんとうの英語がわかる51の処方箋」ロジャー・パルバース、上杉隼人著 新潮選書p.45~46

「to interruptが一番普通に使われるのは、たぶん人々がお互いに話している時だと思います。そしてこの使い方にこそ、日本人と欧米人のコミュニケーション方法の違いが示されている、とぼくは感じます。
 世界中の人たちが、ほかの人が話している時にそれを遮ってしまうのは無礼なことである、と教えられていることでしょう。なるほど、ほかの人が話し終えるまで話し出さずに待つというのが、世界共通の礼儀です。しかし、多くのヨーロッパ人、アメリカ人、オーストラリア人、ブラジル人、インド人、中国人……そしてそのほか多くの国の人たちは、何か話したいという欲求に駆られれば、人が話していようがいまいが、おかまいなしに口を挟んでしまうのではないでしょうか。
 ぼくはユダヤ人ですから、人間のこうした面を特に強く感じます。なぜならユダヤ人は、ほかの人が話している時に口を挟んでしまうのはもちろん、二人が同時に話してしまうことも日常茶飯事です。ぼくは日本の雑誌でかなりたくさんの対談をこなしてきましたが、その際にはいつも礼儀正しくあろうと、すなわち、相手が話し終えるまで絶対に口を挟むまい、と心掛けています。しかし、常々思うのですが、もし本物のユダヤ人同士の対談を雑誌に収録すれば、それはまるでオペラの二重唱を聞くかのように、平行して流れる二つのコラムをを同時に楽しむことができるでしょう。
 相手が話し終えるまで辛抱強く待ち続ける日本人の自制心というものに、ぼくは常々感心しています。to interrupt someone who is talkingに対応する日本語の成句は、「話の腰を折る」だと思います。もちろん、この「腰」は強くてしなやかなものでしょう。うまい「そば」にも「腰」があります。これを折ってしまうのは、ユダヤ人にとっても、まったくいいことではありません。(To break this is definetely not a kosher thing to do.)
ですから、今度誰かおしゃべりな人が何かを考え中のあなたに話し掛けるなどして邪魔をするなら、こう言うのがいいでしょう。

"Please don't interrupt me."(ちょっと待ってよ)

14:48:25 | akybe | comments(0) | TrackBacks