December 04, 2005

ショパン・コンクールの入賞者たち

 ショパン・コンクールは数多い国際音楽コンクールの中でも、きわめて評価の高いコンクールである。過去の上位入賞者たちを並べてみるとその意味がよくご理解いただけよう。

 <過去の上位入賞者たち>
ヴラディーミル・アシュケナージ、マウリツィオ・ポリーニ、マルタ・アルゲリッチ、クリスチャン・ツィメルマン、ダン・タイ・ソン、ブーニン、ジャン・マルク・ルイサダ、ケヴィン・ケナー、ユンディ・リー
 日本からも、中村紘子、内田光子、小山実稚恵、横山幸雄、高橋多佳子

 このコンクールは、5年に1回ショパンの母国ポーランドの首都ワルシャワで開催される。

 わたしはワルシャワにたまたま1975年から78年まで滞在したので、幸いにして1975年の第9回ショパン・コンクールを第一次予選から、入賞者によるリサイタルまで、じっくりと聴く機会に恵まれた。私のHPのエッセイ欄にもその時のことを書いたエッセイを載せている(「ギドン・クルメール讃」)。爾来、ことのほか高い関心を持って、毎年の結果を見守っている。

 今年10月に行われた第15回の入賞者は次の通りとなった。

<第15回ショパン国際ピアノコンクール入賞者>
第1位…ラファウ・ブレハッチ(ポーランド)
第2位…該当者なし
第3位…イム・ドンヘ イム・ドンミン兄弟(韓国)
第4位…関本昌平(大阪) 山本貴志(長野)
第5位…該当者なし
第6位…カ・リン・コリーン・リー(香港)

 日本人はショパン好きだから、毎年多くのピアニストが参加する。15回目にあたる今年も世界で最多だった。私が直接見た第9回のときも、最多だった。

 第9回で優勝したのは、クリスチャン・ツィメルマンだった。久しぶりにポーランドから、しかも弱冠18歳の若者の優勝者が出たというので、会場はいつまでもいつまでも拍手と足踏みと「ブラボー」の歓呼が耳を聾するほどとどろき続けた。

 クリスチャン・ツィメルマンが、リサイタルの舞台に颯爽と登場し、指揮者とにっこりほほえみを交わしながらショパンのピアノ協奏曲を弾き始めた光景を今でも覚えているが、彼は、入賞後も、思索面も含めて更に研鑽に励み、ピアニストの重鎮として、今なお第一線で活躍している。公演に来日したとき、聴きにいったが、きわめて密度の濃い演奏に圧倒されたことを覚えている。

 あの年から30年後の今年、第15回で、まさしく30年ぶりにポーランドから優勝者が出た。ラファウ・ブレハッチ。これまた弱冠20歳の若者である。会場の興奮ぶりが目に浮かぶ。彼は、2003年11月第5回浜松国際ピアノコンクールに参加し、2位に入賞したこともある人で、日本にファン・クラブができている。今回のショパン・コンクールでの優勝は、クラブ員を大いに喜ばせたことであろう。

 その浜松コンクールのHPから引用すれば「12人の審査委員のうち、浜コンでも審査員をしたピオトル・パレッチニ氏(ポーランド・ショパンアカデミー学院教授)は語る。

『ブレハッチが、浜松国際コンクール後、他の国際コンクールで別の審査員達に演奏者として高く評価されて大変嬉しい。もちろん、そこでも僕を除く他の11名の審査員達は彼のことを全然知らなかった。ブレハッチが演奏しはじめると、みんな息をのんで驚いた。「あの子は誰?」と(笑)。若い演奏者はテクニック思考で、がむしゃらに演奏しがちです。しかしブレハッチの演奏は彼等と違う。詩情に溢れ、ロマンテイックな音楽性で、審査員達の注目を集めました。ブレハッチのショパンは素晴らしい。』と絶賛。

まさにポーランドの「発掘された逸材」は、大きなチャンスを与えられ、世界に飛び立とうとしている。」

ということのようだ。ツィメルマンのように成長することを期待したい。


 日本からは、関本昌平(大阪) 山本貴志(長野)の両名が4位に入賞した。

 ラファウ・ブレハッチと関本昌平(大阪) 山本貴志(長野)の両名が参加し、<第15回ショパン国際ピアノコンクール〜入賞者によるコンサート>(**)が来年1月開催される。演奏は、ショパン国際ピアノコンクールのオフィシャル・オーケストラであるワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団。指揮は同オーケストラの芸術監督アントニ・ヴィット。できたら、「詩情に溢れ、ロマンテイックな音楽性」を聴きに行きたいものと思っている。


(*)ショパン・コンクールのオフィシャル・サイトから引用

■ラファウ・ブレハッチ(ポーランド)

1985年6月30日、ナクウォ生まれ。ビドゴシチ音楽アカデミーにてボボヴァ=ズィドロン氏に師事。1996年-1999年に行われた国際ピアノコンクールで数々の賞を受賞。第5回A.ルビンシュタイン国際青少年ピアノコンクール(2002年:ビドゴシチ)第2位。第5回浜松国際ピアノコンクール(2003年)第2位。第4回国際ピアノコンクール(2004年:モロッコ)第1位。第15回ショパン国際ピアノコンクール(2005年:ワルシャワ)の選考の為に開催されたポーランドショパンピアノコンクール第1位。
ポーランドピアノ芸術祭 青年の部(スウープスク)優勝。ポーランド、ドイツ、日本で開催されたコンサートに多数の出演経験を持つ。

(**)
<第15回ショパン国際ピアノコンクール〜入賞者によるコンサート>


 次世代を担う新星たち〜ショパンコンクール・オフィシャル・オーケストラのワルシャワ・フィルと繰り広げる音の饗宴 ショパン国際ピアノコンクールは5年に一度、ポーランド・ワルシャワにて開催され、世界の精鋭が集まる。数ある中でも歴史ある最も有名で、かつ難しく、権威ある音楽コンクール。日本でも非常に関心が高いが、世界中のマスコミ、関係者、音楽ファンが注目している。上位入賞者は、その後、世界的に活躍している。

 今回、第15回で第1位を見事獲得したラファウ・ブレハッチ、そして4位入賞を果たした、関本昌平を招いてコンサート開催。演奏はショパン国際ピアノコンクールのオフィシャル・オーケストラであるワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団。指揮は同オーケストラの芸術監督アントニ・ヴィットがタクトを振る。

これから活躍する新たなピアニストのフレッシュな演奏をどうぞ、お見逃しなく!








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15:14:41 | akybe | comments(0) | TrackBacks