December 14, 2005

読後感:「地球ってすばらしいですね 旅と絵」吉良幸世 (2005.12.14)


読後感
「旅と絵 地球ってすばらしいですね 」吉良幸世 
  婦人人之友社  1991.5.5 C0026 \1300(105)E p.95

(2005.12.14掲載)


 自由学園の教師をしていた著者は、創設された教師研修基金の研修第一号に選ばれ、3ヶ月の研修旅行が与えられる。

 長年、子どもたちに理科と工作を教え、一緒に虫や花、鳥や木を友として生き、日本鳥学会、日本野鳥の会の会員でもある著者は、鳥や昆虫や植物に造詣が深いだけでなく、水彩画の名手でもある。

 長年、一度は行きたいと夢に見ていた場所を、アメリカに留学していた次男、ドイツに留学していた長男を伴う形で、次々に訪れ、美しい水彩画に描きあげる。

 「森の生活・ウォルデン」のウォルデン、「セルボーン博物誌」のセルボーン、水禽協会のあるスリムブリッジ、ドイツの黒い森シュバルツヴァルト、パスカルの山ピュイ・ド・ドーム、ファーブルの村サン・レオン、セザンヌの山サント・ヴィクトワール山、始祖鳥のふるさとアイヒシュテット、シーボルトの和鳥の標本を蔵すライデン等々、実に精力的に見て回り、絵をものにする。訪問地は、著者も言うとおり、ガイドブックにはあまり載ってなく、日本では知られていない場所がほとんど。

 著者の率直で飾らないお人柄のせいであろう、行く場所、行く場所で、素晴らしい案内人が現れて、親切に案内してくれ、滅多にお目にかかれないようなものまで見せてくれ、スケッチさせてくれる。そうした人々との交友が、またほのぼのとたのしく書かれている。

 訪問した先々の風景や人物、鳥、花、樹木、昆虫などの生き物を描いた、カラーの水彩画は、色も良くデッサンも的確で、見応えがある。文章も良くて実に楽しく読めた。

 ただ、本の中身は、カラフルで楽しいのに、カバーのデザインが、今一の感じで、カバーは体を表していず、本屋で危うく見逃すところだったのは、少し残念。(2005.12.14記す)


23:35:58 | akybe | comments(0) | TrackBacks