December 07, 2005

読後感:「数の悪魔」エンツェンスベルガー著 晶文社 1998

 さあ、いまから数学の勉強をしましょう。内容は、1、0、素数、無理数、三角数、フィボナッチ数、パスカルの三角形、順列・組合せ、無限と収束、オイラーの公式、旅するセールスマンの問題、ウソつきのパラドックス……と並べられたら、私とて、いえ、もう、結構ですと逃げ出したに違いない。

 ところが、この本に並んでいる見出しは、「1の不思議」「0はえらい」「素数の秘密」「わけのわからない数と大根」「ヤシの実で三角形をつくる」「にぎやかなウサギ時計」「パスカルの三角形」「いったい何通りあるの?」「はてしない物語」「雪片のマジック」「証明はむずかしい」「ピタゴラスの宮殿」の12項目だけ。そんな難しいことが書いてあるなど、まったく思わせない。いや、読んでみても、まったく難しさを感じさせないのだ。

 なにせ、10歳のロバートという算数が嫌いで、学校では算数のボッケル先生に辟易している男の子の夢の中に、年老いた「数の悪魔」が夜な夜な、12夜も現れては、一夜に一つずつ、先の見出しの項目についてのレクチャアをするという体裁が取られており、数学嫌いな10歳の子供でもわかるように、実にかみ砕いてわかりやすく、面白く、興味が次々とわき上がるように書かれているのだ。

 著者は、1929年生まれ、ドイツを代表する詩人・批評家。評論から子どもの本まで多彩な文筆活動をしている人で、同じ出版社(晶文社)から「ヨーロッパ半島」「政治と犯罪」「冷戦から内戦へ」「スペインの短い夏」など、7冊の本が出版されている(1998年現在)。

 さすが、すぐれた文筆家の手になるだけあって、数の摩訶不思議さが、じつにたくみに提示されるので、頁をめくるたびに、驚嘆の度はますます増大し、「なるほど」「なるほど」と深く深く納得させられ、一見単純にみえる数が、自然界が、図形が、思いもかけない関連性をもっていることに目を見開かせされ、今までとは、ものを見る目がまるっきり違っていることに気づかされるのだ。たとえば、三角形、四角形、五角形、多角形、読後は、もう、今まで通りには見られないはずだ。その単純な形の中に潜む、不思議な数の存在に思いを馳せるに違いないのだ。
1.41421356……、1.618……という数に対しても、同じ現象がおこるに違いない。

 小川洋子の「博士が愛した数式」にも、似たような感触を得たことがあるが、数の面白さは実に奥が深い。まさしく、第9夜「はてしない物語」にあるように、はてしない、のだ。

20:52:47 | akybe | comments(0) | TrackBacks

CIT:日本バッシャー

日本バッシャー
日本人が日本人に気に入らない発言をするやっかいな外国人に「バッシャー」というラベルを張って排斥するのは、「あいつはアカだ、組織の敵だ、非国民だ」として気に入らない発言をする従業員を排斥するのと、メカニズムは全く同じである。その点、気に入らない意見にも耳を傾けるアメリカとは違う。
cf.アラン・ウェバー(ハーバード・ビジネスレヴュー誌編集長)『日本叩きの深層』(朝日新聞1990/1/10)



12:54:18 | akybe | comments(0) | TrackBacks