June 26, 2006

読後感「こぐこぐ自転車」伊藤礼

伊藤礼の「こぐこぐ自転車」を今日読み終えた。
「パチリの人」(新潮社)で、一種独特のおかしみをたたえた文章になじみ、私の好きな囲碁に関するものであったので、十分愉しませてもらったこともあり、今度の本も、私が今強い関心を持っている自転車に関するものであり、きっと面白いに違いないと、あちこちの本屋で探したが見つからず、最近やっとAmazonで手に入れたものだけに、早く読みたいと思っていたが、今日になってしまった。

 古希の年齢で、囲碁愛好家から自転車愛好家に転向し、3年の間に6台もの自転車を購入し、下に引用したように酸素供給機構が弱いにも拘わらず、都内の河川下りを手始めに、房州、箱根、碓氷峠(?)に繰り出し、11日間に及ぶ北海道自転車旅行までこなすサイクリストになった顛末が、例の一種独特のおかしみをたたえた文章で淡々と綴られており、じつに楽しい。これから自転車愛好家になろうと思っている私にとっても大いに参考になった。

「私はポケットから黒眼鏡を出してかけ、横目で七月の緑の山を鑑賞しながら喘ぎ喘ぎ自転車をこいだ。すぐ喘いでしまうのは五十年ぐらい昔、肺結核で肺の切除手術を受けていたからであった。喀血をして、そのあと気胸をして、また喀血し、結局当時流行っていた肺葉切除手術を受けたのである。肺の体積がちいさくなっただけでなくさらに悪いことにそのとき受けた輸血のために肝炎になり肝臓もぼろぼろになってしまったから、体内の酸素供給機構が十分に機能しないのだ。それで残念ながら坂道でみんなにおくれをとるが、いつもそれを精神力でカバーしているのであった。」(p.281)

「このホテルには感心なところがあった。私たちは早く着きすぎたので時間つぶしに四人で碁を打とうということになって碁盤の有無を尋ねたところ、かなり粗末ではあったが碁盤が二面もあったのである。ということはこのホテルの文化度はかなり高いということであった。
 私たち四人は自転車愛好家になる前長いこと囲碁愛好家だったから、旅の中で時々碁を打とうという提案がなされる。ところが近頃はホテルや旅館で碁盤を備えていないところが多い。前の晩泊まった羅臼第一ホテルもそうだった。」(p.289)

「今は東京も美幌も似たようなものになっていて、東京は過密の都会で美幌は田舎だというにすぎない。伊藤整は美幌駅前の食堂で東京からの隔絶感を感じながらポークカツを食べたが、私が美幌峠で食べたカツカレーの味にはとくにそういう感慨は含まれていなかった。しかし似たものを食べたのは事実で、ちなみに伊藤整というのは拙者の父親なのだから、六十六年後に期せずして親子が似たものを食べたところが面白いといえば面白いのであった。」(p.306)

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June 17, 2006

ワイト島とマルコーニ

「1894年にマルコーニが電磁波の送信装置を発明し、1901年には海上の船に通信を送る沿岸送信所をワイト島に建設した。」

「超整理日記 118」野口悠紀雄 (週刊ダイヤモンド 2000.1.29 p.76)

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