August 29, 2007

読後感:「吉原手引草」

 今期の直木賞を受賞した松井今朝子の「吉原手引草」を読み終えた。

 何といううまい語り口だろう。吉原に尋ねてきた謎の若い男性を相手に、独特の語り口を持つ個性的豊かな語り手が次々と登場して、問われるままに答えていくうちに、葛城という吉原一の花魁がある日突然失踪した事件の全容が少しずつ明らかになっていく。聞き手の若い男の素性が最後にして明らかになり、それと同時に、これまでの謎がすべて氷解するとともに、葛城という女性の像が鮮やかに浮かび上がって来、小気味よい読後感にとっぷり浸れる仕掛けになっている。
いや、堪能しました。また、すごい女流の書き手が現れたものだ。

00:49:13 | akybe | comments(0) | TrackBacks