March 26, 2005
外国に出るとなぜ「ホッ」とするのか。(2005.3.26)
外国に出るとなぜ「ホッ」とするのか。(2005.3.26)日本人は、わたしのいういわゆる「ウズ社会」の住人で、自分を取り巻く周りの人々の存在を絶えず気にせざるを得ない。そのため、日本にいる限り、そのウズの勢力圏から完全に自由になりえない。そのため、外国に出ると「ホッ」とし、自然に振る舞えるようになり、自由を感じるのである。以下に引用した小澤征爾と武満徹の会話が、その微妙な感覚を的確に捉えている。
小澤:おれなんか日本が好きで、味わうものがいっぱいあって、家族がいて、母親がいて、兄弟がいて、友だちがいて、食物も、飲み食いも、みんな好きなのに、アメリカに着くと「ああ帰った」と思って本能的に心楽しいね。これも矛盾だな。
武満:おれもそうなんだよ。なぜだろう。外国に出ると作曲ができなくなるくせに、ニューヨークに着くと「ホッ」とするね。街を歩いていても「歩いている」という感じがする。知っている人がいないとかいうのではなく、友人がいても、何を着ていてもいいし、なにを食べてもいいし、どんな会に出席しても平気で自己流の話しが出来、好きな時に帰って来て、自分が嫌だったら嫌だと言える。日本にいるとそれが少ない。
「音楽」小澤征爾・武満徹(新潮文庫p.197〜198)
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