July 09, 2006

CIT:[熱狂する自転車競走]「幸福先進国フランス」秋川陽二 講談社 1981.4.10

「幸福先進国フランス」秋川陽二 講談社 1981.4.10 ¥1200E p.286

熱狂する自転車競走
[一ヶ月にわたるフランス一周耐久レース]p.75

「さて、それでは、野球に興味のないフランスでは現在の新聞のスポーツ欄のトップ記事は何か、つまり初夏の季節、フランス人のもっとも関心のある運動競技は何かというと、日本にいる日本人でこれに正しく答えられる人はおそらくほとんどいないであろう。
じつは、これがなんと、自転車競走なのである。

自転車競走といっても日本の競輪のような競技場内での競走ではない。いわゆる長距離ロードレースで、それもえんえん一ヶ月にわたってフランスを駆けめぐるというという超長期耐久レースである。しかもそのコースのなかにかならずピレネーの山岳地帯とかアルプス山中とかのような急勾配の坂道が入っており、参加選手にとっては、人間の体力、気力の限界を試されるはなはだしく過酷なレースである。

首相より知名度が高いレースの優勝者」p.76

「このレースはフランスを一周するという意味でトゥール・ド・フランスと名づけられているが、すでに今年で六十七年という長い歴史をもっており、このレースの覇者は国民的英雄として永遠ににフランス人に記憶される栄誉をになうことになる。

日本の競輪ファンは国民のごく一部に限定されているが、フランスの自転車競走のファンは文字どおり老若、男女、貴賤、インテリ非インテリを問わない。

四、五年前の夏のある休日の午後、フランス人もまじえてブリッジの会を催したことがあった。
そのとき、私のパートナーのフランス人の中年女性が急にプレーを止めて、今日はトゥール・ド・フランスの最終日で、今ちょうどテレビでシャンゼリゼ通りの決勝点を映していると思うから、ちょっとブリッジを中断してその場面を見たいといいだし、驚いた記憶がある。

その婦人は日本語の漢字も読めるくらいのたいへんなインテリで、しかもブリッジが飯より好きといった感じの女性であったが、そのような女性でもトゥール・ド・フランスとなると、ブリッジを中断してでもテレビを見たがるのである。

マナーの悪い日本のケイリン競走ファン」p.78

「日本の競輪もそのスピードとスリルは素晴らしいものがあると思うが、どうも日本では自転車競技は国民のあいだで多少白眼視されているような気がする。

これはおそらく一部の競輪ファンがときどき焼き打ちなどの問題を起こすことがその原因であろうが、見物人のマナーが悪いためにその運動競技そのものが冷たい眼で見られるとすれば、選手たちが気の毒である。

一部のマナーの悪いファンのために、自転車競走のような美しい運動競技が正当に評価されないのはまことに残念である。
.........

 聞くところによると、日本のケイリン競走も近いうちに世界選手権種目に入るとのことだが、相変わらず日本の得意種目の輸出という発想ばかりでなく、トゥール・ド・フランスのような耐久ロードレースを日本にも輸入してみたらいかがであろうか。
 ヨーロッパの一流選手がトゥール・ド・ジャポンに参加する時代が来れば、日欧間の理解も一段と進むのではないか。」p.79

Posted by akybe at 12:55 P | from category: 自転車 | TrackBacks
Comments

akybe:

■ 待望の都内幹線道に自転車専用道

??ガソリン価格の高騰や駐車違反の取締り強化などマイカー族には向い風が吹いているのに比べ、自転車を取り巻く環境は良くなっているようですが。

 まもなく東京の幹線道路の一つである山手通りの池袋-渋谷間に自転車専用道路が誕生します。交通量の多い主要道にこのような専用道路が設けられること自体、社会全体に自転車の素晴らしさを見直そうという機運が盛り上がってきたことのあかしではないでしょうか。

 私たちは国内外を問わず、この専用道路のことをアピールしていますし、私自身も完成を心待ちにしています。自転車は通勤・通学だけでなく、レジャーや健康づくりの面でも、大変有用で、これから第二の人生を迎える団塊世代にもぴったりだと思います。スローライフとかロハスとかいうこれからのライフスタイルに最も適したツールと言えます。

??これまで以上に自転車が身近になる可能性があるわけですね。

 現在、日本の自転車保有台数は約8600万台。一年間に約1100万台も売れています。近距離都市交通に欠かせない存在にもかかわらず、自転車に優しい社会にはなっていません。どこでも、いつでも、だれでも利用できるのに肩身が狭いのも事実です。私の体験から話しましょう。

 新宿の東京都庁から湾岸部の夢の島まで25キロを走る「東京シティサイクリング」に参加したのですが、車道では、私たちのすぐ横をクルマが無遠慮にビュンビュン通過しますし、歩道は、工事跡の凸凹だらけで実に走りにくかったことを覚えています。

■ 安全適合のお墨付き制度も

??自転車環境の整備が急務ですね。

 三位一体で進めていかなくてはなりません。

 まず、安心して、安全に乗れる自転車の普及です。次が空間整備、安心して走れる専用道建設です。さらに、駅前などの駐輪場の整備です。「安心、安全」ということで、(社)自転車協会では安全基準適合車にBAA(自転車協会認証)という制度を設けました。
 自転車は人を乗せて高速で走るのです。品質管理と耐久性の向上が欠かせません。販売店では自転車技士を配置し、購入時や購入後もアドバイスを行っています。こうすることで利用者の意識も高まります。優れた自転車とサービスに対し、対価を払っていただきたいというのが関係者の願いです。

 確かに中国からの輸入単価6000円の製品も売られていますが、中国も付加価値のある自転車へ転換を目ざし始めています。安い自転車は違法駐輪で撤去されても惜しくないので、放置自転車の温床にもなっています。
(October 03, 2006 10:11 P)

akybe:

??外国に比べ、自転車に絡む事故が多いと聞きます。

 自転車乗用中の死亡事故が多く、高齢者の割合が6割にもなります。また、歩行者と自転車利用者の死亡事故割合は45%にも達し、イギリスの25%、フランスの14%に比べ、非常に高率です。

■ ハード整備と同時に知恵も絞る

??有効な対策はありますか。

 車道は危険だし、かといって歩道の走行も安全ではありませんし、歩行者には、凶器扱いされることもあります。そうした状況の中で、ルール・マナーを守ることは不可欠ですが、それだけでは限界があります。

 さきほどからお話しているように、空間整備が急務です。専用道の整備を進めるのと同時に、住宅地や商店街などでは、自転車が専用に通行できる道路・時間帯、ノーカーデーを設けるなど、きめ細かな規制をして、自動車との棲み分けをする方法も考えられます。お金をかけるだけでなく、知恵を絞り、実行可能なアイディアを積極的に取り入れていくことです。現行の交通標識に自転車通行を意識したものを加えることも検討してみてはどうでしょうか。つまり、ハード、ソフト両面から見直す必要があるということです。

??欧米の自転車事情は日本と異なりますか。

 ひと言でいえば、自転車文化の層の厚みが違います。専用道路、駐輪場などの施設が整っていて、実用と楽しみ双方で生活の中心に位置づけられていると感じました。フランスのボルドーの商店街の入口には、自動車の進入禁止のポールがあります。その商店街の住人や荷物の搬入車両だけは、ポールに磁気カードを差し入れると、それが地中に引っ込んで通行できるシステムです。このお陰で人と自転車はゆっくりと安全に買物ができます。
 こうしたシステムは日本の技術をもってすれば、たやすく実現するのではないでしょうか。
 サイクリングはメジャーなスポーツであり、ツール・ド・フランスなど自転車レースの勝者は国民的英雄です。地域にも自転車関連のフェスティバルがたくさんあります。
 また、機能やデザインに優れた自転車を持っている人も多く、仕事が終わってから、サイクリングを楽しむ余裕があります。

??阿部会長のおっしゃる「3つのゆとり」とはどういうことですか。

 先ほどの三位一体と重なるところもありますが、「3つのゆとり」が必要ではないかと思います。1つは空間的なゆとりで、自転車道や駐輪場の整備充実です。2つめは時間的なゆとり。日本はGDPは高いのですが労働生産性は決して高くありません。仕事から解放された自由な時間を増やしていかなければ、自転車にも乗れません。

 3つめは人間的なゆとりで、多様なことを楽しめる心のゆとりです。
この3つのゆとりがあってこそ、自転車を楽しむことができ、それをまた人生の楽しみにできるのではないかと思います。

??ところで、阿部会長ご自身の自転車ライフはいかがですか。

 この部屋に飾ってある水彩画は私が自転車をモチーフにして描いたものです。少しでも、皆さんが自転車について思いを馳せてくれたらと思い、筆をとりました。

 私はスポーツが好きで、スキー、ゴルフ、テニスを楽しみますが、自転車が4番目の趣味になりつつあります。だから、冒頭に話した山手通りの自転車専用道の開通が待ち遠しくてなりません。

??会長のお話を伺っていたら何だかサイクリングに行きたくなってきました。素敵な自転車も買いたくなりました。きょうはありがとうございました。
(October 03, 2006 10:12 P)
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