July 09, 2005

日記:1964.8.20(木曜日)

1964.8.20

木曜日



〇雨と降るならば今 日の雨のように…

朝、眼が覚めると雨 の音だ。久しぶりに聞く雨の音だ。何となくほっとして窓を開ける。白い雨脚の下に屋根並が遠くまでキラキラ光っている。木々が生き返ったような顔をして、 静かに天を仰いでいる。



ほんとうに一月ぶり の雨だ。昨日までは連日の猛暑だった。7月22日以来毎日31度を越す日が続いていた。明治何年かに31日間も31度を越す日が続いたことがあるそうで、 今年はこれを破るのではないかと新聞が騒ぎ出した矢先だった。

待ちに待った雨だっ た。



つい、五日前の終戦 記念日にこんな冗句がNewspaperに載っていた。



歴史

19年前??廃墟

19年後??サバク



まさしく東京は砂漠 と化しつつあった。貯水池には完水時の2〜3%程度の水しかなく、給水制限は第4次まで強められ、一日中断水する区域も出る始末。と うとう自衛隊までが、引っ張り出されて、給水作業をやっていた。土はからからに乾き、人間の心まで乾きつつあった。まさに今日の雨こそ慈雨である。



人々は等しくほっと 胸を撫ぜ下ろしたことだろう。

白い雨脚が激しく舗 道にたたきつける。

自動車が水を撥ね上 げながら、疾走するさえ、子供が嬉々として水浴びしているかのように感じられる。



夜更けまでに東京地 方で53.3mm。小河内貯水池の付近で85.6mmの雨が降ったとRadio のNewsが伝えている。これで500万トンの水が、貯水池に流 れ込むとのことである。給水制限もいくらかは緩められることであろう。



雨はまた秋がついそ こまで来ていることを教えてくれた。そういえば8月も20日、こんな涼しい日が週に2、3日はあってもよい頃なのであった。朝方パジャマだけでは薄ら寒い 雨気をはらんだ風に、今年もまた秋が、連日の猛暑の後ろでじわじわと忍び寄っていたことを感じたのだった。そういう目で見れば、雨に濡れた景色には、どこ となく秋らしさが感じられ、もはや華やかな夏の面影は、どこにも見当たらない。一夜にして夏は去り、秋がやってきたのだ。



0時25分。雨の音がひとしきり高まっている。夜の暗闇が雨に濡れて、遠くに瞬く灯の明か りがひときわ輝くように見える。窓を開けた私の部屋を、秋を思わせる風が吹きぬける。
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Posted by akybe at 11:21 P | from category: 日記 | TrackBacks
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