March 11, 2007

最長の新聞漫画「ほのぼの君」作者の降板について

 東京新聞の今年3月8日朝刊一面に、新聞漫画として日本最長15451回を記録した「ほのぼの君」が、ついに幕を閉じることになったとの社告が出ている。東京新聞に1956年以来、途中休載の年間を挟み、通算44年間、朝刊漫画を描いてきた佃公彦(77歳)さんが、体調不調から、降板することになったというのである。

 この佃公彦さんとは、一夕歓談したことがある。そのときの模様は、エッセイ「四十年ぶりのことども」に詳しい。その部分を、下に引用すると、

「この二月、雑誌編集者のMさんから電子メールをいただいた。彼女が「文無し横丁の人々」をキーワードにインターネットを検索したら、私のホームページが引っかかった、日記に出ていたという。

 私は一九九七年二月にインターネット上にホームページを開き、私家版全集を編むつもりで、これまで執筆したもの、描いたものを片っ端から掲載している。日記も九歳の時の絵日記から、十八歳の時のまで収録を終えている。

 確かめると、一九五六年十一月十日、十六歳のときの日記に、この映画を見ての感想があった。

 「ヒューマニズム感があふれている。・・・すべての人が見られて心暖まる映画は映画人は作らないものだが、その異例のの一作というところか。良い映画だった。」

 「第三の男」で知られる名匠キャロル・リード監督のこの映画を当時二六歳の青年漫画家も見て深く感動し、この映画のような、ほのぼのとした漫画を書こうと決意する。その漫画家は、爾来「ほのぼの君」のタイトルで、東京新聞に四コマ漫画を書き続ける。

 Mさんは、この漫画家佃公彦さんの大のファンで、佃さんの一生を方向づけた映画ということで、検索してみる気になったという。

 これが縁となりお二人の行きつけの飲み屋で、これも三月の一夜大いに歓談することになった。

 田舎の映画好きの少年が見た映画が四六年後、未知の人を結びつける触媒となった。だが、インターネットという新しいメディアがなければおよそ考えられぬ 出会いであった。」

 このエッセイを書いたのは、4年前のことである。その後も、4年間、描き続けられて、降板することになったのだ。作品を編集者に手渡した後、この飲み屋で飲むのが習慣になっているとのお話をうかがったことを思い出す。お元気になられて、長生きされることを祈りたい。

Posted by akybe at 03:39 P | from category: 人生の愉しみ | TrackBacks
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